脳卒中後72時間以内の座位バランス、麻痺側の機能が6ヶ月後の自立歩行の予測因子となる

今回は、脳卒中6カ月後の自立歩行の予後予測についてです。先行研究では、脳卒中24週目に測定した片麻痺脚の筋力および座位バランスが、6ヵ月後の歩行能力の改善および自立歩行達成と有意に関連するとされています。しかし急性期の機能評価から予後予測している文献は少ないように考えます。今回は急性期における予後予測についての論文を紹介します。

 

Is Accurate Prediction of Gait
in Nonambulatory Stroke Patients Possible Within 72 Hours Poststroke? The EPOS Study

J. M. Veerbeek, MSc1, E. E. H. Van Wegen, PhD1,
B. C. Harmeling–Van der Wel, PT
2, and G. Kwakkel, PhD1, for the EPOS Investigators

 

 

back graound

 脳卒中患者の約60%〜80%が、脳卒中6カ月の時点で自立歩行が可能であることが示されている。

多くの予後予測研究によると、年齢、 感覚および運動機能障害の程度、 同名半盲、座位バランス、入院時の初期障害意識、脳卒中発症から最初の評価までの日数 が、脳卒中発症後 6 カ月の歩行結果と関連していることが示唆されています。

 

 

研究の目的は

脳卒中6カ月の自立歩行が脳卒中72時間以内に正確に予測できるかどうかを調べること。

5日目と9日目の早期再評価が、脳卒中6カ月の自立歩行の回復という転帰を予測する精度に与える影響を調べることであった。

 

○Methods

自立歩行ができない初発の虚血性脳卒中患者154名を対象に,19の人口統計学的および臨床的変数を,脳卒中72時間以内,および5日目と9日目に再評価した。

多変量ロジスティックモデルを用いて、Functional Ambulation Categories4点以上と定義された自立歩行を取り戻すための早期予後因子を特定した。

 

○Result

表2:二変量ロジスティック回帰分析によって決定された、脳卒中後6ヵ月間の自立歩行に関連する72時間以内の障害・疾患(N = 154)

脳卒中発症後72時間以内の評価を対象とした二変量ロジスティック回帰分析で求めた、6ヵ月後の自立歩行のORとその95CIである。19個の候補変数のうち、15個が脳卒中6ヵ月目の自立歩行の回復に有意に関連していた

 

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表3脳卒中6ヵ月で自立歩行を達成する確率

多変量回帰分析で15の有意な決定要因候補をすべて同時にテストした結果、TCTバランスとMIレッグスコアで有意な値が算出された。

TCT-sスコアが最大25点(例えば、30秒間の座位保持が可能)で、MI legスコア(片麻痺側の筋力:3項目股関節、膝関節、足関節)が25点以上(例えば、収縮が見られるが、すべての動作ができない)の患者が、自立歩行を達成する確率は最大で98

 

最初の72時間にこれらの特徴がなかった場合の確率は27%で、9日目には10%に低下した

 

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○Conclusion

脳卒中後すぐに、2つの簡単なベッドサイドテストを用いて、自立歩行の正確な予測が可能である。「座位バランス」と「片麻痺脚の筋力」という2つの簡単なベッドサイドテストで、自立歩行性能を正確に予測することができる。この知識は、病院の脳卒中病棟での治療目標や退院計画に関する早期の臨床判断に有用である。

 

*1

今回の研究により、発症早期の歩行自立に関連する予測因子が確立されました。

予後予測は、適切な治療目標の立案や、患者・家族への情報を提供する際に必要であり、そのためには確立されたデータを基に予測することが重要です。

*1:まとめ